2008-11-22(Sat)

[第15信](後) 権利としての社会復帰/権利としての仮釈放

 では、〈隠れ請求権〉としての〈仮釈請求権〉は、どのような法的根拠に 基づいて存立し得るのでしょうか? 団籐重光著『法学の基礎』(第2版、有斐閣、 07・5・10)の112頁には、「社会復帰の権利をみとめるべきである」とありま すが、残念ながら、その法的構成については展開されてありません。〈社会復帰 権〉というものを考えるなら、私は次のようにこの権利を構成します。
 先ず第1は、憲法で保障されている身体自由権を淵源とする身体自由回 復権です。受刑による身体の拘禁とは、一時的なものであって、身体自由権そのもの は否定できないものであり、したがって、拘禁の必要性がなくなれば、あるいは拘 禁がかえって害になるのであれば、受刑者はその身体の自由を回復する権利 を主張(請求)できるというものです。
 その第2は、刑の目的とはしていない長期拘禁による弊害(健康破壊等)を回 避する権利が、これも身体自由権から淵源してくるということです。これを弊害 回避権と称しておきます。この弊害回禁権は、憲法25条[生存権]に淵源を もつとすることもできるし、また、刑訴482条の設定趣旨からも、この権利の存在を 推定することができます。
 その第3は、自由主義原理(法理)の実効原則としての、「権力行使の必要最小 限」原則に淵源するところの、権力の過剰行使に対する抑止請求権です。これら の原権利群によって、受刑者が自由社会に復帰して、いたずらに公権力に干渉 されずに平穏な生活を営む〈社会復帰権〉が基礎づけられると考えられます。 〈仮釈請求権〉は、この〈社会復帰権〉に基礎づけられ、かつ、そこから派 生して来た権利と見ることができます。
 ではなぜ、〈仮釈請求権〉というものが存在しながら、受刑者には、法文上、 明示的に仮釈申立権といったものが与えられていないのでしょうか。その理由は、 次のように考えられます。もし、受刑者に無条件に仮釈申立権を与えたならば、地方更生 保護委員会(以下、地方委と略)に仮釈申立が殺到し、業務麻痺に陥るからです。そこで、 一定の絞りをかけるものとして、刑務所長というクッションを措き、受刑者自身の仮釈 申立権に代えて、刑務所長に独立代理申立権としての、先次申立権を与えたという ことです。
 受刑者の身体自由への意思は普遍的なものであることから、全ての受刑者は仮釈申立 の意志をもっていると推定できます。刑務所長は、その受刑者の意志を代理して、しかし 申立の時期に関しては独立して、刑務所長の総合判断において、先立って申立てる 権限が与えられていると解釈できます。したがって、刑務所長に与えられている申立権 は、独立代理申立権てはあっても、新「更生保護法」の34条に規定されているように、仮 釈申立の条件がクリアーできていれば、恣意を排して必ず申立てをしなければなら ないと義務づけられており、あくまでも先次申立権であって、このことで受刑者の 潜在的な申立権が否定されたことにはなりません。地方委の決定に対しては、明 文で受刑者の後次申立権が認められていることから、〈隠れ請求権〉の存在が 推定されますが、この〈隠れ請求権〉が存在していてこそ、刑務所長の独立代理申 立権としての先次申立権も成立し、法的に基礎づけられるということになります。
 「先次申立権=刑務所長/後次申立権=受刑者」というふうに制度構成を 認めたとしても、なをこの制度構成には欠陥があります。つまり、刑務所長の判 断になお恣意性(不透明性)が残る欠点があり、この欠点を克服するため には、刑務所長の先次申立を促すものとして、受刑者に刑務所長への先 次申立催告権をあたえるべきであると考えます。そうしてこそ、受刑者の社会 復帰権としての仮釈請求権の保障が制度的に完備すると言えます。
 仮釈審査じたいが行政不服審査の対象となり、裁判所による司法審査の対象 ともなるという今日的状況においては、仮釈手続全体の一層の明確性・透 明性が問われることになります。その意味から、通算をめぐる新解釈の法律 化と先次申立催告権の新設定は、誠に急務であると考えています。
2008年4月19日 北の獄より

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