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2007-12-16(Sun)

無期囚による体験的〈無期刑〉論

[第1信]法務省広報部?
 前略。
前略。「無期懲役資料」「ウィキペディア」等プリントアウトの差し入れ、受けと りました。ありがとう。11月19日、22日と雪が降り、ここに 来て最低気温は氷点下、一気に寒くなった感じです。房内 も肌を刺すような寒さ。夏が猛暑の冬は酷寒でしょうか。 それを象徴するような11月の降雪日です。
 ところで、今、チョー役(「懲」あるいは「超」)衆の間で話題に なっているのは、11月16日の徳島刑務所での騒動の件 です。新聞に報道された記事は、当局発表をそのままなぞった ものでしょうが、どんな隠された事実があるのか、それぞれ の体験に照らして、想像し、また推理しています。
 とは言え、20年前なら、あるいは10年前なら、刑務所内の 不祥事は、当局の情報(事実)隠蔽体質から表に出ることは 稀れだったし、新聞報道に載っても、受刑者の眼に触れ る前に、黒々と抹消されたものです。
 現在は、特に「受刑者新法」施行前後からは、徐々に改め られ、全部ではないまでも、公表されるようになり、今で は抹消される記事も、だいたい刑事関連施設での自殺死亡 記事、それも自殺の具体的方法に関する部分に限定されている ようです。外国刑務所の暴動の記事すら抹消されていた20年前に比 べれば、改善されて来た、いや当たり前に近づいてきたということ は、認めるところです。さて、それでは本題に入ります。
 〈無期懲役〉〈仮釈放〉〈未決勾留〉〈未決通算〉などを巡る概念規定 や実態把握について、かなりのところ誤観念が流布しているという印象を 受けました。例えば、ウィキペディァ(以下「ウィキ」と略す)の〈未決勾留〉〈未決勾 留日数〉や〈無期懲役〉〈無期懲役刑と未決勾留日数について〉などですが、 およそ中立的記述とはいえません。はっきり言って、非中立的なベタ偏向記 述と言わなければなりません。なぜならば、現行実務の依拠する誤った 解釈によって、無期囚の人権が侵害されているという実態については、一言も 記述していないからです。現行実務が依拠している誤解釈と対立する有力 な正解釈が存在するにも拘らず、その正解釈の存在についてすら触れられていな いからです。
 そもそも法律用語を解読・解説するということは、その基本概念を規定し、設 定目的を明らかにするということであり、特にそれが刑法・刑事訴訟法のカテ ゴリーに属する場合には、基本的人権との関連性を問うということであり、さら に、その基本概念と照応する運用実態を関連付けて記述してこそ、必要十分 な概念規定と言えるわけです。
 好意的に解釈すれば、本質的論議を行わず瑣末主義のドツボにはまっ ているわれらが法学界・法曹界の理論的貧困を、あるいは依拠すべきテキストの欠如 を「ウィキ」が単に反映しているのであって、責められるべきはわれらが法 学界・法曹界であって、「ウィキ」の方ではない、ということになりましょうか?  一方、辛口風に言えば、上記法律用語に関する「ウィキ」の水準は、ほとんど 用語(単語)の意味を表記する国語辞典のレベルであって、人類の知的営 み=知的財産のエッセンスを体系的に包括した網羅的カタログとし ての百科事典(エンサイクロペディア)とは、お世辞にも言えない、ということ になりましょうか?
 〈仮釈放〉の概念規定について言えば、その制度目的の一つが、長期拘 禁による弊害、例えば健康破壊・人格破壊・社会適応力の減退など(この 事実は保坂氏の質問による政府答弁でも認めていたのではなかっ たか?)を避け、その被害を最小限に喰い止めるということにあるとい う点が、全く欠落しています。
 受刑者の健康破壊等は刑の目的であってはならないが、現実には刑執行 の副次効果として必然的に随伴するものであるが故に、これを極力抑える ことは、受刑者人権の保護上、執行サイドの義務であり、そういった目的も、〈仮 釈放〉には付与されています(→執行サイドにとって義務としての〈仮釈放〉/ 受刑者にとって権利としての〈仮釈放〉)。
 そもそも、現憲法下において、〈仮釈放〉はどう本質的に概念規定さ れるべきなのか? 個人の生命・身体とその自由を最大限に尊重し、国家権 力の強制力の行使は、これを必要最小限に抑制するという自由主義の観 点から、諸条件が整い要件を満たせば、前記諸々の弊害を伴う拘束的刑 執行から半拘束的刑執行に出来るだけ早くスイッチングし、教育刑=矯正 (更生)主義の観点に立ち、獄内矯正処遇から獄外矯正処遇に段 階移行(社会復帰へのソフトランディング)させるというのが、〈仮釈放〉の 基本概念(制度目的)です。したがって、長期拘禁による弊害を避け、その被害 を最小限に喰い止めるということも、〈仮釈放〉の目的であるということは、 この基本概念から論理必然的に導き出されるし、必要的経過期間への未決通算 の繰り入れも、これとの関連で論理的に帰結するものなのです。
 それゆえ、仮出獄者の在獄期間が伸びるということは、その制度目的から すれば、後退であり、機能不全であり、形骸化であって、決して「仮釈放制度の 運用の適正化」とは言えません。在獄期間の短縮化こそ、〈仮釈放〉運 用の適正化であって、在獄期間の長期化とは、矯正教育の実践的不充 分性の証と言うべきでありましょう。したがって、最良の刑事(行刑)政策の 向かう方向とは、在獄期間のいたずらな長期化の方向ではなく、獄 内矯正処遇→獄外矯正処遇の制度的充実化とそれへの市民の理解と協力態勢 の拡大であり、そして、その結果としての在獄期間の合理的な短縮化で す。この点で、残念ながら、検察の〈仮釈放〉抑制方針は決定的かつ全面的 に誤っており、矯正教育の充実化政策に反する有害なものと言わざるを得 ません。
 一方、世間の動きに目を向ければ、社会奉仕命令などの社会内処遇は、「犯 罪者」を野放しにすると非難する論調も、マスメディアの一部分に見受けられ るようです。しかし、その伝でいけば、有罪政治家の大好きな執行猶予制度 の存在も否定されることになりましょう。裁判員制度の開始、社会内処遇の 拡大、修復的司法の実施など、市民が義務的であれ、ボランティア的であれ、 刑事訴訟(とその延長・周辺)プロセスに関与する機会が拡大してくることは 必至な流れのなかて、法的概念の誤てる定義・規定は正されなければ ならないし、先入見を排し、的確な判断を下すための基礎となる精確 な基本概念を流布させることは、急務であると思います。
 ところで、こういった正しい法知識の流布を行うのは、法務省・法 曹界・法学界の社会的役割でありましょう。しかし、今のところ、そういった公 的機関等が、効果的な広報活動を行っているようには見られないの は、誠に残念です。こういった公的機関等に、法的誤観念の流 布を改善する気配が見られないということであれば、ここはこの不肖 “牢獄の法哲人”が、その代役(ピンチヒッター)を買って出るべきなのか、 と考えています。お墨付きを得た訳ではないが、「法務省広報部」の役 割を担ってみるのも、また一興かと感ずるところです。
 次便以降では、〈未決通算〉について法哲学的考察のノミを打ち込んでみるこ とにします。
 2007年11月25日       北の獄より
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プロフィール

mugunfasaita

Author:mugunfasaita
牢哲Ω玄龍
《著者紹介》
2013年で在獄38年目。この間、在在論哲学の独自の方法論と独創
的な詩法を確立。2011年9月に〈牢獄の法哲人〉名で、電子ブック
『死刑論議その最終決戦に向けて∞君は死刑ありの裁判員制
度を愛せるか?』を、2012年4月に、電子ブック『獄にさく花うた
う鳥∞詩とアフォリズム・哲学的断章Ⅰ』を出版。

twitterーーhttps://twitter.com/routetsu_genryu

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