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2017-02-07(Tue)

[第88信]相模原殺人事件考(その3)

[1]精神科医によって、「妄想性」「薬物性」「非社会性」といった
レッテル張りが行われていたことからも明らかなように、容
疑者Uが、公的機関に申告した「犯行計画書」は、精神異常
者の薬物性妄想状態が作り出した妄想であって、本人が本気
でその通り実行するとは認識されていなかった、と見て間
違いないでしょう。ここが、今回の事件の重要なポイントです。
ところが、妄想が作り上げたとされた「犯行計画書」通りに、
実行されていたことは、後に警察当局が認めるところです。
[2]もし、容疑者Uの殺人予告を、精神異常者の妄想ではな
く、〈観念〉殺人者の内的葛藤から来る救助シグナルであり、
本気で実行するものだという認識を、警察当局が持ち得てい
たら、今回の障害者大量虐殺は、未然に防止し得ていたのです。
威力業務妨害で逮捕するという手もあったし、常時監視態勢
におき、凶器入手を現認して、殺人予備罪で逮捕するという手も
あったはずです。措置入院で身柄を拘束するという方向で、中途
半折な対応に終始したことが、そもそもの誤りと反省すべき
でしょう。なぜなら、その判断をする精神科医には、殺人者の
行動心理を解析する技量を現在のところ、期待できないからです。
[3]あれだけ詳細にして具体的な「計画書」を入手し得ていた
のだから、本気で阻止しようと公的機関が決定していたのな
ら、阻止し得ていたはずです。それをしなかったということは、「計
画書」を精神異常者の妄想の産物と見ていた上に、障害者の命を
守ることに、公的機関じたいどの部署も、全く意欲を欠いてい
たすらだ、と言わざるをえません。
[4]「障害者抹殺は社会のためになる。故に社会は本音ではそ
れを望んでいる」という〈観念〉に取り憑かれた容疑者Uの心の
なかでは、次のような心理的ダイナミズムが展開されていた
と推測されます。新皮質前頭葉が、殺人〈観念〉に乗っ取られ
ると、その〈観念〉は、悪魔的自己を作り出し、当人の心理劇
場において、当人の主導権をめぐってのドラマが始まります。そ
こで、悪魔的自己が第一に槍玉に挙げるのが、「人を殺す
のは悪であり、殺したくない」という良心的自己であり、そいつを
追放し、黙らせることです。この良心的自己は、当人の心理劇場
内では、悪魔的自己に勝てないと見て、その外部に助けを求
めようとします。それが、「自分は人を殺そうとしている」という外
部の人間へのアナウンスであり、救助シグナルです。例えば、〈観念〉
殺人のカテゴリに入り得る長崎少女の同級生殺し(人を殺してみた
かった)においても、この救助シグナル発されています。
[5]平常心理の人間には、人を殺すことに対して、それを嫌
悪し、ためらう感情的ハードルが備わっています。この感情的
ハードルが、極度の怒りといった情動や薬物反応によって乗り越え
られる時、人は殺人に走り易くなります。殺人行動(目的意識的
なそれ)に至るには、この感情的ハードルを低下させ、なおかつ
殺人行為を遂行するだけのエネルギーを必要とします。一人で
短時間に体を使って、大量殺人(刺殺)を行おうとすれば、そ
れだけの情動エネルギー量を必要とするのです。では、容疑者
Uは、この大量殺人に必要にして十分な情動エネルギーを、どこか
ら得たのでしょうか。
[6]〈観念〉殺人においては、殺人〈観念〉に取り憑かれて
いるだけでは、その実行には至りません。情動エネルギーが蓄
積され、その爆発的放出として、殺人は実行されます。通常、〈観
念〉殺人者は、その情動エネルギーを、古皮質から備給します。
容疑者Uの場合、自分の存在を認めてれない社会への一般
的不満、自分を解雇した当の障害者施設の経営者への逆怨
み、自分が世間一般の基準として「使える人間」であることをアピー
ルしたいという自己証明欲――そういった欲望欲動の蓄
積が殺人〈観念〉に乗っ取られた新皮質前頭葉に、古皮質に眠
むる大量の情動エネルギーを、備給し、提供し、感情ハードルを低下
させ、それを踏み越えさせ、短時間での大量殺人に至らせた
のです。なお、薬物摂取は、この感情的ハードルを下げる働きがあります。
[7]この〈観念〉殺人の心理的プロセスからは、人がいかにして
殺人マシーンに成り得るかという秘密を、読み取ることが出
来ます。これは、軍隊における殺人マシンとしての兵士を作り出
す秘密でもあり、すでに各国の軍隊では、第一次大戦以来、研
究され尽くされている公然の秘密です。第一に、「敵を殺すこと
がお国のためになり、正義である」という〈観念〉で、新皮質前
頭葉を染め上げ、支配すること。第二に、人殺しをためらう感
情的ハードルを切り下げる心理操作をほどこすこと。第三に、
古皮質に抑圧され蓄積している大量の情動エネルギーを、爆発
的に放出させる心理操作をほどこすこと――これです。
[8]殺人マシーン化した殺人実行者は、その実行中、いうところ
の「失感情症」状態にあります。つまり、人を殺すことをためらう
人間的感情を喪失し、相手に対する憐みの感情も失っているのです。
この実行中の「失感情症」状態は、悪魔的自己によって、良心的自
己が完璧に制圧されてしまい、感情的ハードルが最低限まで
切り下げられ、大量の情動エネルギーによって、それが踏み越え
られてしまった結果です。かくして、冷酷無慈悲な殺人マシーンと
化すのです。軍隊において、温厚な市民が短期間で殺人マシーン
と化す由縁です。
[9]大量殺人者の実行中の心理状況を特徴づける様相の一つは、
今、指摘した「失感情症」状態です。もう一つは、「キリング・ハイ」状
態です。自分が切り付けて他人に流させた血を見ることで、闘牛の如
く興奮し、交感神経過興奮状態になり、アドレナリンを過剰放出し、そ
のことで神経が高ぶり、次々と他人を切り付け刺し殺して行きながら疲れを
知らない――これが「キリング・ハイ」の心理状況です。秋葉原大
量殺人の実行者も、容疑者Uと同じく、「失感情症」状態と
「キリング・ハイ」状態とを合わせもった心理状況にあったと推測できます。
       2016年9月10日記 北の獄より
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2016-12-27(Tue)

[第87信]相模原殺人事件考(その2)

[1]7.26相模原事件は、容疑者Uが大量虐殺事件を実行
するに先行して、その詳細な計画を公的機関に予告していた
点で、公的機関の対応次第では、阻止し得た事件です。その
意味で、とりわけ、その任にある警察当局の大敗北です。犯
罪者の行動心理分析を担うプロファイリング担当官の心理学的大
敗北です。プロファイリング技法が依拠するところの、現代犯
罪心理学の歴史的大敗北です。
[2]容疑者Uは、なぜ、障害者の詳細な虐殺計画を、事前に
公的機関に申告したのか。それは、そうすることで、この計画
の実行を、公的機関に、未然に阻止してくれることを期待して
いたのです。これは、公的機関に対する、「私の行動を止め
てくれ」という救助シグナルだったのです。にも拘らず、公的
機関は、このシグナルの心理的意味を読み取ることに、失敗
したのです。この公的機関の無策無対応を、容疑者Uは、実行許
可と解釈し、実行意志を固めたことは、間違いありません。
[3]なぜ容疑者Uは、重度の知的障害者のみを、意図的に選
別して、虐殺したのか。既存の犯罪心理学は、この根本的な疑
問に答えることが出来ません。「精神異常者の無差別殺人」という
セオリーでは、今回の事件の動機すら解明できません。従来の
犯罪心理学には存在しない、〈観念〉殺人というカテゴリを設定
することでのみ、今回の大量虐殺の真相深層に照明を当
てることが出来るのです。
[4]従来の犯罪心理学が実践的有効性を欠くのは、分析対象
の個人というものの心理(精神)を、個人の閉じこめられた性格の裡
に閉じ込めてしまい、それを社会心理のダイナミックな反映でも
あるものとして、社会連関的な視座から照明を当てるという
方法論を、欠落しているからです。
[5]前稿で指摘したように、今回の障害者大量虐殺事件は、新
自由主義的グローバル化の時代的趨勢にあって、「使える人間/使
えない人間」という価値付けが、効率至上・能力至上主義的に
強化されつつある社会風潮の、心理的反映として勃発
したという視点こそ、欠かすことは出来ません。
[6]コストだけかかり、価値を生み出さないと社会的に規定さ
れ、「使えない人間」とされた障害者。その人権は尊重されなけ
ればならないとされながらも、実は、世間一般的には、それは
建前にしかすぎず、本音は「厄介払いしたい」というこの社
会全体の偽善性――この偽善性を、容疑者Uは、障害者の
介護を通して、痛く知ってしまったのでしょう。「ならば、この私
が、その社会的本音を実行して見せよう」というのが、今回の障
害者大量虐殺事件です。このコンテクストにおいてのみ、重度の知的
障害者を執拗に見つけ出し、選別的に虐殺したという事実の意
味を、解明できるのです。
[7]それ故、容疑者Uに対する、「妄想性障害」とか、「非社会
性パーソナリティー障害」とか、「薬物性精神病性障害」とかという
既存の精神病理学的な観点からのレッテル張りは、なんの意
味もないばかりか、真相深層を覆い隠してしまう役割を果して
いるという点で、有害以外のなにものでもありません。容疑者U
に接した精神科医がなすべきだったことは、マニュアルに従って
分類し、レッテルを貼ることではなく、「障害者の存在は、人類の
精神的深化にとって不可欠の存在である故に、社会にとって必
要な存在である」という存在論哲学をバックボーンとして、容疑者U
の心のなかの「障害者不用」〈観念〉と正面から思想対決し、打ち破
ることだったのです。
[8]ある種の社会的傾向的な〈観念〉は、悪魔の如く人に取り憑き、
人の新皮質前頭葉を乗っ取り、人を殺人行為へと走らすことがあ
る――これこそ今回の相模原殺人事件の、外せない教訓です。
[9]よって、今回の相模原殺人事件を、殺人学的にまとめれば――
①無抵抗の重度知的障害者を意図的に選別し、問答無用で刺し殺し
た計画的な大量虐殺であったこと。②虐殺計画の詳細を事前に公
的機関に申告し、その背後にある世間が、本気で障害者を守る意志
があるかを試した上での実行であったという意味での予告殺人で
あったということ。③「コストだけかかり、価値を生み出さない人間を
社会的に排除していくという社会傾向的な〈観念〉に憑依
された〈観念〉殺人であったということ。
             2016年8月16日 記  北の獄より
2016-11-21(Mon)

[第86信] 相模原殺人事件考(その1)

[1]7月26日の、相模原・知的障害者施設での大量殺人事件
に、世間は大きな衝撃を受けました。しかし、その衝撃の
深さがどこから来るのか、それは未だ解明されていない
と言えましょう。否、皆、直感的には、気付いているかも
しれません。しかし、その事実のおぞましさ故に、意図的に
語ることを避けている、と言っていいでしょう。
[2]精神に問題のありそうな若者が、知的障害者を大量虐
殺するという今回の殺人事件は、一種の〈観念〉殺人と
でも言うべき事件です。文学作品を引き合いに出せば、
ドストエフスキーの『罪と罰』の主人公の殺人行為です。
[3]資本主義というこの経済メカニズムは、その生産(労働)
過程から、効率の悪いもの、利潤極大化の足を引っぱる要
素を、常に、排除し、切り捨てようとする〈観念〉を分秘し
続けています。生産性向上を至上命令とするこの経済メカニズム
にとって、この効率至上〈観念〉は宿命です。
[4]しかし、この効率至上〈観念〉は、人間を破壊し、結果、社
会そのものを崩壊させる〈観念〉です。そこで、この有毒〈観念〉
を抑えるために、市民社会は、自然権的な人権〈観念〉を発展
させて来ました。この相対立する〈観念〉同士のバランスに
よって、人間破壊=社会崩壊が回避されて来たのです。
[5]しかし、21世紀に入り、新自由主義的グローバリズムが地
球規模で猛威を振るうなかで、効率至上〈観念〉は、効率
至上主義〈観念〉として、社会に広く蔓延し始めているのです。
効率至上〈観念〉と、人間の尊厳を核とした自然権的人権〈
観念〉とのバランスが崩れ、人々の意識に、効率至上主義を
よしとする〈観念〉が深く滲透し来たっているのです。すなわ
ち、効率至上主義の風潮の象徴的事件が、今回の障害者大
量虐殺と言って間違いありません。
[6]虐殺実行者Uは、この利潤極大化のための効率至上
主義を極限化すれば、どうなるかという、その極限〈観念〉を実行し
てしまったと言っていいでしょう。そして、この〈観念〉は、現代人
なら、誰でもが、心の片隅に棲み付かせているのです。そ
れを思い知らせてしまったことが、今回の〈観念〉殺人の衝撃
性の真相なのです。情緒的ステロタイプ反応の底にある真実に
こそ、私たちは、恐れずに目を向けなければなりません。
           2116年7月30日記  北の獄より
2016-10-11(Tue)

[第85信]日誌抜粋

◎1月1日。「モチを食べる時、喉につまらさぬように注意する
こと」という告知放送あり(2日、3日にもあり)。
◎1月21日。差入の制限(書籍・メガネ等)についての告知あり。
差入業務の負担軽減が目的のよう。
◎1月25日。厚労省企画指示の大腸ガン検診についての
告知あり。
◎1月27日。法務省発表によれば、2015年段階で、60才以上
の受刑者の14%、1300人に認知症の疑いありとの調査結
果が出たらしい。3年前に比べると10倍だという。何年も前
から、私が予測し、警告していた通りに、事は進んでいると言っ
ていい。
◎2月1日。窓隠しのメッシュ・シート撤去される。新しい購入
用冊子、入る。
◎2月5日。当印刷工場で、「原稿打ち込み―編集―製版」
まで、一貫して全て実施することになったため、パソコン・オペレーターと
して、引張り出されることになる。若い受刑者の人材不足と言
ったところか。ワープロ機でキーボート練習はじまる。
◎2月8日。ひも付きの新枕カバー、入る。
◎2月16日。新しい私物箱、入る。旧私物箱が製造中止のた
めらしい。新私物箱は、中国製の黒のキャリーバッグ(トルジョイアルファー)。
大きさは、約38×25×79(単位はcm)。
◎2月29日。ノートを宅下する場合、事前に検査願を提出せよ、
との告知あり。新聞に大きな抹消あり。
◎3月4日。新聞に大きな抹消あり。
◎3月6日。新聞に大きな抹消あり。
◎3月7日。新聞に抹消あり。
◎3月8日。新聞に大きな抹消あり。
◎3月9日。本年1回目の布団乾燥(機械)。
◎3月10日。地方面に抹消あり。職業訓練としての、ビジネ
ス・スキル科パソコン基礎講座の受講者募集の告知あり(15人、
3ヵ月間)。
◎3月11日。2011年当日と同じく、金曜の矯正処遇日であっ
たため、2時46分、舎房にて黙祷。
◎3月16日。ブラインド・タッチ、ほぼ出来るようになる。
◎3月22日。新聞に大きな抹消あり。19日~21日に、編集・製版
機が工場に搬入され、本日より、本体機に付属するパソコ
ンでの、打ち込み練習スタート。
◎3月24日。本番原稿の打ち込み開始。
◎3月30日。パソコン講座の受講につき、許可との告知あり。
同工場だけで5人。
◎4月1日。第1回目のパソコン講座。当講座は、昨年7月から
始まったらしい。講師は作業課の技官。機種は、NECのノート
型PC。テキストは、『大きな字でわかりやすいワード2013入門』
(AYURA/技術評論社)。①電源の入れ方、切り方。②ワード
の開き方。③文字の入力の練習。
◎4月6日。桜満開宣言。報奨金使用制限令に引っかかり、電子
辞書の購入不許可となる。アベノミクス・消費促進・1億総括
躍という国策に照らして、いかがなものか。
◎4月7日。第2回目のパソコン講座。変換そして文書作成の
練習。保存の仕方。
◎4月11日。第3回目のパソコン講座。ファイルの開き方と上書き
保存。練習問題に基づく文書作成。雪まじりの桜吹雪。耳が痛
くなる程の寒い日であったが、グランドての運動再開。桜の
花は満開を過ぎ、2・3割は散ってしまっている。今回からは、
インターバル・ウォーキングを継続して行う。
◎4月12日。昨日のウォーキングのため、スネの筋肉痛、少々
あり。それだけ冬の間、足を使わなかった証拠。
◎4月14日。熊本地震(M6.4)。
◎4月15日。朝、窓から、ひょろひょろと、縞蚊が入って来る。
9日に24度という暑さがあり、羽化した奴か。
◎4月16日。熊本地震(M7.3)。
◎4月17日。エクアドル地震(M7.7)。
◎4月19日。第4回目のパソコン講座。練習問題の続行。
◎4月20日。独居房ドアに「覗き窓」を付ける工事がなさ
れる。視察・監視の強化策ということか。
◎4月21日。第5回目のパソコン講座。練習問題の続行。
◎4月25日。グランドの花――赤・白・黄のチューリップとタンポ
ポ。舎室の畳の上をちっちゃなテントウ虫が這っているのを発見。
◎4月27日。高齢者臨時給付金の申請書、届く。
◎5月9日。母(90歳)死去との訃報。服喪免業については
辞退。服喪免業とは、作業事故を避けるための予防的制度。
◎5月11日。第6回目のパソコン講座。書式。
◎5月16日。冬処遇終了と共に、夏処遇はじまる(衣更え)。
◎5月17日。第7回目のパソコン講座。書式の復習と画像挿入・
飾り機能など。
◎5月19日。第8回目のパソコン講座。イラスト・色文字等を使って
チラシを自由制作し、印刷。それぞれの作品を見比べる。グラン
ドの花――アジサイ(白・紫)。
◎5月23日。第9回目のパソコン講座。エクセルを使っての、住所
録の作成。真夏日(32度)。
◎5月24日。カッコウ初聴(今年はウグイスの声、4月に聴かず)。
座布団が、個人貸与制になると言うことで、呼称番号付きの新品
と交換になる。
◎5月25日。第10回目のパソコン講座。エクセルを使っての表計算。
◎6月1日。新聞に大きな抹消。
◎6月2日。第11回目のパソコン講座。エクセルの表計算。感想文の
作成。
◎6月6日。第12回目のパソコン講座。感想文の作成。満足
な出来。もっと長く続けたいというのは、訓練生全員の思い。
◎6月9日。郵送宅下で報奨金を使用する場合は、事前に報
奨金使用願いを提出し、許可を得なければならないというふうに、大
きく手続きの変更あり。報奨金使用規制。必要相当の領置金があ
る場合は、不許となる。
◎6月13日。梅雨入り。
◎6月17日。午後9時頃、満月に近づいた月の少々下の方に、ひ
ときわ明るく輝く星あり。これは火星か? (火星は5月13日に、
ここ10年間では地球に最接近、1月の大きさの3倍に見えたと、
後に知る)。
◎6月21日。布団乾燥、2回目(天日干しとしては1回目)。
◎6月28日。熱中症予防に関しての訓示(指印取り)。
◎6月30日。ビジネススキル科(パソコン基礎課程)の終了証、交
付される。
      2016年7月9日 記    北の獄より
2016-09-13(Tue)

[第83信]猫に聴かせたい猫の歌

 [1]前略。今回は、詩編を送ります。先ず、この詩編《猫は
歌姫》成立事情について述べておきましょう。ある夜(正確
に言うと2015年8月25日)、夢を見ました。その夢のなかで、
私の膝上には猫が乗っていました。私は、その猫の背中
をやさしく撫でていました。猫は撫物。目が覚めてから、私は、
一種、不思議な気持ちになり、しばし、あれこれと考え続けました。
 [2]猫好きの夢のなかに猫が現れて来るのは、何の不思議
もありません。ところが、私は、ペット動物には、全く無関心な人
間です。犬党派でもなければ、猫党派でもありません。全くニュー
トラルな無(関心)党派=ノンセクトと言っていいでしょう。そうい
う無関心人間の夢のなかに、何の因縁もなく、ひょっこり猫が
現れ、それも極めて親密そうな雰囲気が醸し出されていた故
に、これを不可思議と感じた訳です。
 [3]あれこれと何日間か考えた末に、行き着いた結論は、
こうです。後から触れますが、例えば、猫族の絶対精神(ガイスト)
というものがあるとしましょう。この猫族のガイストが、猫族のガイス
トを人に知らしめたく、猫族の英雄叙事詩を創作することを、
欲したとしましょう。そこで、猫族会議での検討の末、候補
詩人リストにノミネートされた一人が、genryuという訳です。
 [4]常識的には、マニアックな猫好き君こそ、それに相応しい
と考えがちですが、それは浅い考えです。猫マニアは、かえって、
猫と人との関係を、幅広い視野から、深く捉えることが出来な
いものです。「恋は盲目」との格言もあります。感動的バイアス
がかかると、かえって、客観的現実を捉え損ねるものです。そう
いう意味で、むしろ、党派性なきニュートラル人間こそ、客観的現
実を捉える上では、適役ということになります。
 [5]猫族ガイストからご指名を受けたとあらば、これはこれとして、
名誉なことです。私の夢のなかに現れたあの猫は、その使い、伝達
役だったのでしょう。しかし、そういう解釈に至ってからも、筆を執
るまでには、少々時間がかかりました。熟成期間を要しました。
 [6]人間が作り出した「猫文学」というものを、考えてみましょう。す
ぐ思い浮かぶのは、漱石の『吾輩は猫である』と言ったところでしょ
う。手頃な文集としては、『猫だましい』『にやんそろじー』を繙いて
みましょう。そこから読み取れるのは、猫という動物キャラを被った
人間による人間への批判、あるいは文明批判と言ったベクトルか、
もしくは人間世界の多様的本性を、猫世界のそれであるかの如く、投
射投映した人間物語というベクトルです。
 [7]人間は、猫と歴史的に同居同棲共生して来たとは言え、猫自
身ではないため、猫の目で猫社会を描くことは不可能なの
は、当然と言えば当然です。猫を主人公としても、描かれた世界
は、人間の目で見た世界です。この限界に自覚的に挑戦するこ
となくしては、新たな猫文学というものは、現れてこないでしょう。
猫の擬人化は、不可避です。では、この擬人化の不可避性
を逆手に取って、猫族のガイストに迫る文学的方法は、ないのか。
詩によってそれを為すとしたら、それはどのような方法なのか。
この問題に答が出ない限り、創作には手が付けられなかった訳
です。
 [8]遠い昔から現在に至るまで、猫と人間は共生関係にあり
ます。種族的な大枠としては、猫は、害獣駆除と心理的な癒し
というサービスを人間に提供し、人間は、食・住・医・安全というサ
ービスを猫に提供し、相互利益的な関係を保ち、共進化し
て来たと言えます。ペットの効用とは、人間が埋め合わせとし
て必要する、子供・恋人・拡大家族員等の心理的代理の提供です。
猫と人間との文化的な共進化は、心理的な共進化でもあります。
 [9]猫と人間との共生関係は、互いが互いを映し出す対面双鏡、
すなわち合わせ鏡のようなものです。その対面双鏡が作り出す共
生空間のなかで、双方の欲望がエンドレス反射を繰り返し、相互他
者像の多面的な適応がなされて行きます。人間による多形的な
猫像が形成され、猫サイドでも、相関的に、多形的な人間像が
形成されているはずです。
 [10]自然史的猫は、文明人間との共生関係のなかで、自らも、
自然史的猫であると同時に、文明史的猫であるという、二重性
を生きることになります。猫族の、集合的生命の集合的精神というも
のを想定した場合、それを、猫族の絶対精神(ガイスト)と規定します。
すなわち、猫族のガイストは、人間との共生関係に入ると共に、自然史的
猫の展開段階から、自然史的であると同時に文明史的でもあると
いう、二重性の展開段階に入ったと言えます。この猫の二重性は、人間
という種族の二重性でもあります。
 [11]この二重性において、対面双鏡の共生関係のなかで、文明
史的なバイアス(歪み)がかかった多形的猫像が、人間の文化意識に
形成されて来たとするならば、この人間がつくり出した多形的猫像
の返上的批評によって、自然史的猫としての猫ガイストに、少しは
肉薄出来るのではないかというのが、私の辿り着いた詩作的方法
です。
 [12]猫を前にして、この《猫は歌姫》の詩を朗読し、読み聴か
せてみては、どうでしょう。猫は、どういう表情でこれを聴き、どう
いう態度を示したのか――報告してもらえれば、ありがたいことです。
 [13]参考文献
   ①『吾輩は猫である』(夏目漱石/新潮文庫)
   ②『猫だましい』(河合隼雄/新潮文庫)
   ③『にゃんそろじー』(中川翔子編/新潮文庫)
   ④『猫の言い分お伝えします。』(アネラ/東邦出版)

2016-09-13(Tue)

《NINE-LIVES/猫は歌姫》

《NINE-LIVES/猫は歌姫》
                          作詩〈genryu〉
           1
(プロローグ・カンタービレ)
 ムカシムカシの大昔
 猫は神であったのだ
 ムカシムカシの中昔
 猫は魔物であったのだ
 そのミステリアスな目ゆえに
 人は猫を神と崇め奉り
 人は猫を魔物と恐れた
 それは所詮畢竟ひとの勝手
 人の本性なげ映し出す
 猫とは生きた鏡なのだ
 人のみだらな想いを映す
 人の裏さえ映してしまう
 自然がひょっこり創り出した
 天の使いの天鏡なのだ
            2
(プロローグ・パルランド)
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 ミネルヴァの梟の妖精が
 猫の背中に乗ってやって来た
 猫の命は九つあって
 猫の智恵は百を超えるぞ
 乱世や猫を懐きて夢に入る
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
            3
 クロ シロ ブチ ミケ トラにタマ
 クロ シロ ブチ ミケ トラにタマ
 ミャンクル ミャンクル クッシュン クッシュン
 ニャンゴロ ニャンゴロ ウップン ウップン
 猫だ猫だと おっしゃりますが
 人の居ぬ間に 爪を磨ぐ磨ぐ
 猫のプライド 人の分限
 人類絶減 勝手にどうぞ
 アチキら猫は しぶとく生きる
 ネズミを獲って 命をつなぐ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            4
 恋の季節は 迷惑だって
 アチキラ猫の 聖なるお祭り
 種族繁栄 燃えるお祭り
 季語にもあるよ 猫の恋とは
 猫ちゃんねんねこ 背中でお眠り
 湯たんぽ代りの 抱き猫あったか
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            5
 虎は狩られて 滅びの道へ
 猫はかわいさ 武器に人と
 共存の道 進化なれど
 わがまま自尊 したたか戦略
 土鍋土壺は 極楽至極
 天敵さける 野生の本能
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            6
 キヨホウヘンの メタファー乱舞
 かわい子ちゃんは 小猫ちゃんどす
 かわいらしさにゃ 程なんてないよ
 猫っかわいがり 蝶よ花よと
 キャッツアイは ジュエリーざます
 猫っ被りは 奥床しいじゃん
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            7
 借りて来た猫 招き猫かも
 猫の手だって 時に役立つ
 角力の一手の 猫だましとは
 小洒落たそれは 神技ざぁます
 猫ババそれは 猫聞きの悪い
 婆猫の智恵は 半端じゃないぜ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            8
 猫毛 猫額 猫顔 猫面
 猫舌 猫目 猫脚 猫股
 猫綱 猫板 猫石 猫頭布
 猫の猫背は 黄金曲線
 人の猫背は 灰色曲線
 よくも猫から 取ったもんだね
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            9
 ドラ猫 ノラ猫 なめ猫 ふて猫
 黒猫よぎれば ラッキー記念日
 黒猫のタンゴ 猫踏んじゃった
 猫柳から 化け猫でるか
 スネに傷もつ 人間様よ
 猫なで声の ヘルキャットどす
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            10
 一輪車の名は なぜネコという
 猫も杓子も 丑三時は
 猫の子一匹 見当たらないねこ
 よく鳴く猫は ネズミを捕らず
 能ある猫は 爪を隠すぞ
 猫イラズなら 家猫リストラ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            11
 音色抜群 猫皮三味線
 猫には哀しい 猫皮三味線
 ネコと呼ばれた 猫皮三味線
 それを抱えた お座敷芸者
 ネコと呼ばれた 三味線芸者
 遠い昔の 哀しい話
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            12
 ドロボウ猫とは 失礼千万
 切った張ったは 人間の性
 猫とは無縁の 痴情のもつれ
 猫の目変わりは 人の心ぞ
 人語わかれば 心も読める
 遊ばれている 猫じゃらしぜよ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            13
 猫にまたたび 股旅縁歌
 猫まんまこそ お袋の味
 猫に鰹節 人に見せ金
 猫に小判は 人に生命さ
 猫下ろしあれ 猫股ぎあれ
 イジリ過ぎれば 猫パンチぜよ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
            14
 柔軟さには 人も及ばず
 敏捷たること 誰にも負けず
 バランス力は 天下一品
 ヨガのポーズに その名もあるぞ
 夜にも強い 光るまなざし
 狙った獲物は 逃がしはしない
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
             15
 猫のおひげは 宇宙のアンテナ
 けっこう毛だらけ きれい好きどす
 だらけた時間も ときには必要
 木登り上手 高所がお好き
 ウグイス渡りは 猫の十八番ぞ
 十二支はずれた 孤高の思索家
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
             16
 さぁさぁおいで 鈴付けに来な
 出来たら御ほう美 チューしてあげる
 雨が降ったら 長靴はいて
 赤くてかわいい 長靴はいて
 魔女大学の 特別講師
 小猫生徒の 目の輝きよ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
             17
 食わせ殺しや 虐待もある
 苛め殺しや 捨て置きもある
 でも恩には恩で 報いるという
 アチキら猫の 仁義の哲学
 九の命と 百余の智恵が
 アチキら猫の スピリットぜよ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
 またたび食べて アスタマニャーナ
             18
 猫だ猫だと おっしゃりますが
 人の居ぬ間に 爪を磨ぐ磨ぐ
 猫のプライド 人の分限
 人類絶減 勝手にどうぞ
 アチキら猫は しぶとく生きる
 ネズミを獲って 命をつなぐ
 ダヨダヨダヨニャン ソーダヨニャン
 ミャンクル ミャンクル クッシュン クッシュン
 ニャンゴロ ニャンゴロ ウップン ウップン
 クロ シロ ブチ ミケ トラにタマ
 クロ シロ ブチ ミケ トラにタマ
             19
(エピローグ・パルランド)
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 ミネルヴァの梟の妖精が
 猫の背中に乗ってやって来た
 猫の命は九つあって
 猫の智恵は百を超えるぞ
 わが膝上に猫ありて
 その謎とわにとけることなし
 アニマート コンブリオ ブリッランテ
 アニマート コンブリオ ブリッランテ

[註]読み方→中昔(なかむかし) 崇(あが)め 奉(たてまつ)り
  所詮畢竟(しょせんひっきょう) 本性(ほんしょう) 天鏡(てんきょう)
  梟(ふくろう) 命(いのち) 懐(いだ)き 程(ほど)
  小洒落(こしゃれ)た 婆猫(ばばねこ) 猫額(ねこびたい)
  猫面(ねこづら) 杓子(しゃくし) 丑三時(うしみつどき)
  性(さが) 逃(の)がし 十八番(おはこ)
  苛(いじ)め 膝上(ひざうえ)
 2016年4月16日 記           北の獄より
2016-07-23(Sat)

[第84信]日誌抜粋(2015)

◎4月28日。食器洗い用スポンジの交換が、個室では、
4ヵ月に1回から、2ヵ月に1回になる、との告知あり。
昨日・今日と、4月には異例の、25度を越える夏日の
連続。
◎5月1日。4月から作業報奨金の時給が約5円アップし、
52円90銭となる。
◎5月11日。終業時の足洗いのやり方が変更になる。官物
石ケンに代え、各自の私物の石ケンを使用。終業時の号令の
変更。待機の号令の次に、黙読の号令が新たに追加となる。
◎5月13日。朝方就寝中、6時12分に震度4の地震(岩手県
沖M6.8)。
◎5月15日。舎房内にゴキブリ初出現。前日は27度の夏日。
◎5月20日。カッコウ初聴。
◎5月22日。夕方、まだ明るい6時頃、窓を開けていたと
ころ、縞蚊1匹が入り込んで来る。
◎5月30日。夜7時以降のテレビ視聴時、震度3程度の揺
れを感じる(小笠原沖M8.1)。
◎6月2日。紋白蝶、初見。
◎6月9日。6時のニュース放送、入らず。
◎6月10日。別紙「節水心得」、舎房に入る。
◎6月11日。「在所証明書」等も自己管理となる、との告知あり。
◎6月13日。6時のニュース放送、入らず。
◎6月17日。紙製以外のしおり所持禁止令、出る。布団乾燥あり、
本年2回目(但し、機械)。
◎6月18日。生活習慣病と運動・食事状況に関するアンケート実
施(医務部の研究資料にするため)。
◎6月23日。6時のニュース放送、入らず。
◎6月26日。記録的に遅い梅雨入り。
◎6月29日。外通路での出役待機中、蚊に初刺され。
◎7月3日。官本貸与につき、1冊減の告知あり。部外者の参
観があるとかで、帽子の氏名バッジ外しておけ、との指示あり。
◎7月6日。グランドでのミスト放散が始まる予定であったとこ
ろ、目詰まりで稼働せず。
◎7月8日。ミスト放散、稼働。
◎7月9日。技官より安全教育の訓示あり。その後、①個人情
報の他言はしない、②創意工夫の知的所有権は刑務所に
帰属することに同意する、との署名・指印につき、全員に求め
られる。
◎7月14日。重オフ機で小さな作業事故あり。
◎7月21日。舎房での拭身開始。但し、今年から昼の拭身はなくなる。
◎7月23日。夕方、油蝉の初聴。
◎7月26日。梅雨明け。
◎7月27日。猛暑日(35度)。夕方、蜩の初聴。
◎7月28日。朝方、ツクツク法師の初聴。
◎7月29日。外通路で出役待機中、腕2ヵ所、蚊に刺される。
◎8月4日。猛暑日(35,2度)。入浴のため工場脇外通路で待機中、手首、蚊
に刺される。布団乾燥3回目(天日)。
◎8月5日。猛暑日(36,6度)。夜、虫の音、聞こえ始める。
◎8月6日。猛暑日(36.1度)。外通路で出役待機中、2ヵ所、
蚊に刺される。1ヵ所は手首、もう1ヵ所は顔(左目の下)、待機
中は閉眼を強いられているため、こういう間の抜けたことが起
こる。蚊にとっては天国。
◎8月7日。猛暑日(36度)。放送での告知事項(熱中症対策の特
例措置)――①水で濡らしたタオルを首筋・額に当てることを
認める。タオルは四っ折にして。平日は、夕点検後から本就寝まで。
免業日は、起床から本就寝まで。②室内体操後、5分間、拭身を
認める。③共同室では、在室中は常時、扇風機の稼働可。④期
間は8/8~8/24午前7時半まで。
◎8月8日。立秋。夜は涼しさ感じる。
◎8月11日。8/13~8/17の夏季免業中の15日に、氷化した「ア
クエリアス」を支給する、との告知あり。
◎8月19日。グランドの花、ひまわり咲いている。6時のニュース
放送、入らず。
◎8月20日。新枕への一斉交換。
◎8月23日。新聞に抹消あり。熊本刑務所で受刑者が自殺し
たという記事の、自殺方法の部分。
◎8月25日。外通路で出役待機中、眉の上と肘の2ヵ所、蚊
に刺される。
◎8月26日。夏用の半袖上衣・半ズボンの一斉交換あり。
◎8月27日。矯正医官特例法成立。果たしてこれで、必要
数の医官を確保できるか?
◎8月28日。某組の分裂劇の余波か、厳戒態勢のなかで、2・3
類集会。
◎8月31日。外通路で出役待機中、足の甲、4ヵ所、蚊に刺される。
◎9月1日。食等の見直しで、A食(ライス大)からB食(ライス中)
に降等の者かなりあり。余った予算を副食の充実に回すのかど
うか。工場の大多数につき、脱走時手配用の写真撮影あり。
10年毎が3年毎になったとか。今朝も蚊に刺される。肘に1ヵ
所。出役待機場所がちょうど講堂トイレ前で、草木がはえてい
て、かつ側溝がある。閉眼して5分間程、じっと立っている人間
は、格好の餌食。伝染病を媒介する蚊の培養地を、このまま
にしておいていいものか。
◎9月2日。朝の通過儀礼。例の場所で、蚊軍団の猛攻撃。耳
の下の1ヵ所と足の甲の4ヵ所、刺される。靴下をはいていても、
おかまいなしの刺突攻撃。臨時福祉給付金の手続きについての
告知あり。
◎9月3日。例の給付金に関する市役所からの「お知らせ・申
請書」が届く。
◎9月4日。今日は腕2ヵ所、刺される。10時頃、総合避難訓
練。食堂待機中を写真撮影。
◎9月8~9日。実地監査(122条)。
◎9月9日。朝、監査官たちの前を、受刑者が歩調をとって行進
する観閲式風。
◎9月14日。総員19名に減少。24年間で総員最低記録。ケン
カでひと監房6人が調査入独。ケンカ当事者は2人だけだが、
傷害罪で事件送致になるらしく、その目撃証言を取るためか。
グランドの、ソフトボール用の簡易式バックネットが、前より2倍
ぐらい大きなものと、取り替えになった。舎室前廊下のマットの上
に、黄と黒の縞柄テープが張られる。
◎9月16日。自身の食等がA(大)からB(中)に変更となる。
◎9月22日。回覧新聞に抹消(某組分裂劇?)。
◎9月22日。雲ひとつない秋晴れ。ひと頃に比べると、トンボ
の数が極端に少なくなった。
◎10月8日。ケンカの参考人として、入独調査になっていた4人が
工場復帰。
◎10月14日。グランドでラジオ体操中、からだを後方に反った時、
青空高く浮遊している白い気球が目に入ってくる。インフルエンザ
接種の説明あり。作業報奨金の使用規制の告知。使用できる
のは、1年間の合計支給額の1/2以内。それ以上は、個別審査
によって、不許可となる可能性大。
◎10月20日。4回目の布団乾燥(天日干しとしては3回目)。
◎10月21日。献立メニューについてのアンケート実施。一般学習と
して「色エンピツ画」と「筆ペン習字」が可能との告知。
◎11月5日。マイナンバー通知カードを受領、強制領置。住民票コード
の場合は交付し、自己管理だったことからすれば、一貫性に欠く、
と言えないこともない。顔写真を貼付して郵送し、代理人受領で
マイナンバー・カード(身分証明書)を取得できるのだが、刑務所は、
この件に関して、一切便宜を計らぬとのこと。「出所出来たら、自分
でやれ」ということらしい。
◎11月30日。私物箱の検査あり。無期囚に関する資料(法務省
公表)を入手。それによると、2014年中に仮釈放された無期囚
(再執行は除く)は6人。獄死は23人。生還率は約20%(4
人に1人)。
◎12月2日。綱引き大会の決勝戦。わが印刷工場が優勝。
◎12月3日。冬用チョッキの一斉交換あり。
◎12月11日。新聞に大きな抹消あり。
◎12月14日。舎房の外壁側の窓にメッシュ・シートが張られる。
①日射しがさえぎられ、室内は極端に暗くなる。②日射しが入ら
ないため寒くなる。③トイレの臭気がなかなか抜けない――等
の住環境の悪化。これに対し、今のところ、何の説明もない。
◎12月16日。5回目の布団乾燥(今回は機械)。
◎12月17日。メッシュ・シートの件で正式の告知あり。「2月
頃まで実施。触わるな。破損したら取り調べ」――この2点。
工事の防音にしては、全く効果はない。おそらく、外部の人間と
の不正交通を防止するというのが、真の目的なのでは。医療費抑制
を目的とした備薬申し出の制限についての告知あり。
◎12月22日。年末年始に向けての安全作業について、技官より
訓示あり。
     2016年5月28日 記       北の獄より
2015-12-28(Mon)

『東日本大震災の歌』の発行


宮城刑務所にて服役中の受刑者が、獄中で3・11大地震に遭遇し、それに触発され、創作した叙事詩2編を収録したものです。

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『東日本大震災の歌』

2015-12-28(Mon)

《TERA-TERRA-QUAKE/地球大動乱》

 前略。詩編《地球大動乱》を送ります。これは《マテリアル・
ブルー》の姉妹詩とでも呼べる詩編です。3・11巨大地震以降の
世界各地の地震や火山爆発を聞くにつけ、3・11以降、地球学的
状況は、大動乱期に突入したと考えざるを得ません。そういった
マクロな視点から、3・11以降を捉え直して詠んだ叙事詩、地
球叙事詩が、今回送る詩編です。

《TERA-TERRA-QUAKE/地球大動乱》
                作詩〈genryu〉

おどろどどろに
海と大地がうめきうごめく
さては先振れ先駆け先走り
極に達したジオ・メタ・ストレス
地殻のけいれん 始まるきざしか
ラドンたちこめ 井戸水にごる
ナマズさわいで 蛇がとぐろを
ネズミ逃げだし 犬が吠えるぞ
思わぬ大漁 何たる不漁
海水温の不規則変化
ポンポンポンポンなんだこの音
ボコボコボコボコ泡が吹き出す
にわかに空は赤く輝き
火球が夜空を跳ね回る
地鳴り海鳴り低周音
来たぞ 来たぞ そら来たぞ
てんでに逃げろ 逃げれば助かる

ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ゴンドワナ
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ローラシア
テラ テラ クエイク 大動乱
テラ テラ ショック 動乱期
地球は回る マントル対流
拾面プレイト せめぎしのぎし
渋面プレイト せめぎきしめき
潜る岩板 跳ねる岩板

夏があった
都市があった
太陽があった

大地が波打ち 地鳴りうそぶき 地面が奔る
大地が波打ち 石が飛び出し 土煙が走る
大地が波打ち 地割れ拡大 亀裂が走る
大地が波打ち 樹木ひしめき 鳥が舞い立つ

ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ゴンドワナ
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ローラシア
テラ テラ クエイク 大動乱
テラ テラ ショック 動乱期
地球は回る マントル対流
拾面プレイト せめぎしのぎし
渋面プレイト せめぎきしめき
潜る岩板 跳ねる岩板

冬があった
山があった
雪があった

大地が波打ち 地が隆起して 地が沈み込む
大地が波打ち 山が崩れて 雪崩が駆ける
大地が波打ち 山が沈んで 乱水はしる
大地が波打ち 海が膨れて 海進劇襲

ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ゴンドワナ
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ローラシア
テラ テラ クエイク 大動乱
テラ テラ ショック 動乱期
地球は回る マントル対流
拾面プレイト せめぎしのぎし
渋面プレイト せめぎきしめき
潜る岩板 跳ねる岩板

秋があった
海があった
夜があった

大地が波打ち 家屋が崩れ 道路が割れる
大地が波打ち ビルが倒れて 車つぶれる
大地が波打ち 高架が落ちて 柱が折れる
大地が波打ち 恐怖が奔り 火の手が走る

ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ゴンドワナ
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ローラシア
テラ テラ クエイク 大動乱
テラ テラ ショック 動乱期
地球は回る マントル対流
拾面プレイト せめぎしのぎし
渋面プレイト せめぎきしめき
潜る岩板 跳ねる岩板

春があった
都市が消えた
風があった

山が身震い 噴煙たてて 灰降り積もる
山が身震い 火煙を噴いて 岩石が降る
山が身震い マグマ流れて 山が燃え立つ
山が身震い 火砕ながれて 火の壁はしる

地球は回る マントル対流
拾面プレイト せめぎしのぎし
渋面プレイト せめぎきしめき
潜る岩板 跳ねる岩板
テラ テラ クエイク 大動乱
テラ テラ ショック 動乱期
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ゴンドワナ
ペルム トリアス ジュラ 白亜
ロディニア パンゲア ローラシア

グワオ グワオ グワオ グワオ
寄せに寄せては 乗り越える
グワオ グワオ グワオ グワオ
当たり当たって 押し倒す
グワオ グワオ グワオ グワオ
倒し倒して 打ち砕く
グワオ グワオ グワオ グワオ
裂いて裂いてぞ 薙ぎ倒す
グワオ グワオ グワオ グワオ
暴れ暴れて かき回す
グワオ グワオ グワオ グワオ
潰し潰して 押し流す
グワオ グワオ グワオ グワオ
運び上げては 打ち沈め
グワオ グワオ グワオ グワオ
引きずり呑んで 運び去る

残雪と ともに溶け行く 核炉かな
幻と ともに融け行く 炉心かな
水爆痕 安全エリアの 曲流れ
泥春や 無人と化した 繁華街
夢斬やな 言葉の軽さ 目の重さ
流残無残 雪まじりの烈風 吹き募る
流惨無惨 地煙乱風 吹き止まぬ

せめぎあうプレートの波に乗ったる
サーフィン・ボードの如き花綵列島
思いだにしなかった
想像すらしなかった
悲劇があった
大惨事があった
辛い別れがあった
死する者と生くる者の
そして時が流れた
止まったままの時が流れた
哀しみを運び去らぬ風の如く
そして今、、、、
私たちはここにいる
そして今、、、、
その面影を涙で抱いて
そして今、、、、
その面影を虚しく抱いて
そして今、、、、
サウダージ 叶わぬ愛しさ
そして今、、、、
私たちは生きている
紛れもなく生きている
迷いながらも生きている
手応え求めて生きている

私の遺影の前で泣かないで
なんて決して言わないから
泣きたい時は泣けばいいの
涙はかけがえのない人であった証し
涙は悲しみを洗い流すのよ
私はもうどこにも居ない
でも私はどこにでも居るわ
あなたが私を想う時
私は千の想いに乗ってやって来る
天国でも地獄でもない別世界
私は果てしなく遠くに居て
私はあなたのすぐ側に居るわ
私はあなたには見えないけれど
私はあなたをいつも見守っているわ
私の遺影の前で泣かないで
なんて決して言わないから
泣きたい時は泣けばいいの
あなたが私を想う時
私はあなたを想って
すぐに千の想いに乗ってやって来るわ
必ず千の想いに乗ってやって来るわ

[註]読み方→火球(かきゅう) 拾面(じゅうめん) 土煙(どえん)
  乱水(らんすい) 海進劇襲(かいしんげきしゅう)
  夢斬(むざん) 地煙(ぢけぶり) 花綵(かさい)

2015年 8月15日 記 北の獄より
2015-11-13(Fri)

〔第81信〕日誌抜粋(2014~2015)

〔1〕2014年ー
◎5月27日。カッコウ初聴。刑務所視察委員会の当刑務所に対す
る改善勧告書とそれに対する刑務所の回答のプリントが、掲示版
に貼り出される。視察委の22項目の申し入れに対して、明確に改善すると
の回答は皆無。実施したのは、今のところ、官本
貸与の1冊増のみ。
◎6月6日。舎房衣、新品と一斉交換。
◎6月17日。熱中症予防についての訓示指導あり。
◎7月1日。出役のため外通路で整列待機中、今年初めて蚊に刺される。
◎7月2日。グランドでの、鉄パイプとすのこで作ってあるアズマ屋
でのミスト散布スタート。
◎7月7日。グランドでの、綱引きの練習はじまる。グランドの花ーあじさい、
昼顔。
◎7月12日。明方、地震(震度4)。防災広報の津波注意アナウンスが
獄中まで聞こえて来る。午前4時過ぎ、福島県沖震源M7.0ーと
後に判明。
◎7月14日。諸動作指示の一部改訂によって、運搬員は黄緑
色のベストを着用するようになる。
◎8月4日。ツクツク法師、初聴。
◎8月5日。油蝉、初聴。
◎8月6日。猛暑日。
◎8月14日。ミンミン蝉、初聴。
◎8月17日。秋の虫(松虫か?)の鳴声、チリチリと聞こえ始める。今夏
は結局、蜩の声は聞こえず。樹木伐採の余波か。
◎8月20日。猛暑日。個室・共同室のベットの撤去、始まる。収容人員
減少のためか。
◎8月21日。非常事態(脱獄か?)・人員点検訓練実施。11時過ぎに
作業を一旦中止して整列し、点呼。
◎9月1日~3日。実地監査(122条)。
◎9月1日。4時頃、非常事態点呼の訓練あり。
◎9月5日。総合避難訓練(10:00頃)。
◎9月9日。第2回目の電話通信。
◎9月17日。刑務所職員と県警が合同で受刑者逃走を想定した訓
練を実施(新聞報道より)。
◎9月22日。出役待機中、蚊に刺される(デング熱ウイルスを持っていない
ことを願う)。
◎9月29日。布団乾燥延期、洗濯物の配布おくれる(舎内班の人手
不足か?)。
◎10月5日。文化的事業。宮城教育大吹奏学部の慰問演奏。
◎10月20日。「刑務所視察委員会だよりNo1」配布される。それによ
ると、25年度の意見・提案受付数は96通、面接実施は9人。
◎10月23日。65歳以上の、インフルエンザ予防接種についての
告知あり。接種は辞退。
◎12月16日。肺炎の予防接種についての告知あり。今回は接種年
齢に該当せず。
◎12月31日。年越しソバ、昨年はざるソバだったが、今年はカップ
メン「天そば緑のタヌキ」に変わる。
〔2〕2015年ー
◎1月18日。2・3類集会の時間が90分から45分へ短縮。VTRも映画・
ドラマではなくバラエティ番組。講堂での敬老会および誕生会の廃止と考え
合わせると、見えて来るのは、職員全体としての休日出勤量の縮減、
業務負担の軽減ということか。
◎1月21日。誕生会廃止の代替として、昼食時、誕生月該当者に、
菓子一点(メイプル・ワッフル)付く。
◎1月28日。分類教育によるアンケート(受刑者の意識調査)実施。
◎2月6日。個室備え付けのテレビが、ビクターのブラウン管型(14インチ)
からシャープの19インチ液晶テレビ「AQUOS」(LC19K90/マレーシア
製)に交換になる。平成26年7月25日取得。
◎2月10日。処遇の一部変更についての告知。室内体操は基本、自
由メューで出来るようになる。矯正処遇日の午後に集会が入るよ
うになり、金曜の入浴が日曜に移動。
◎2月16日。領置部門より呼び出し。領置簿のコンピュータ管理への移
行に伴う確認。旧領置簿と入力データとの照合。
◎3月4日。感染性胃腸炎(ノロウイルス)の患者発生とかで手洗い
の指示あり(参考記事→「第35信」「第45信」)。
◎3月6日。玉検(陰茎検査)あり。6番入浴後。
◎3月10日。差入れ用紙の様式が変更に。
◎3月11日。2時46分、震災犠牲者への1分間黙祷。あの日
と同様、雪まじりの強風模様。持出し廃棄用クリアケース貸与。
◎3月17日。本日の最高気温16度。梅ほころぶ。今冬は、結局、
最低気温はマイナス3度まで。窓の結露が凍ることはなかった。収入
印紙も郵券と同様、自己管理にするとの告知あり。
◎3月20日。作業止め後等の「黙想」の号令が、「待機」の号令に変
わる。新たなファイル(工場就業者の諸動作)、舎房に入る。
◎3月23日。発信願箋の様式が変更になる。梅万開なるも、にわ
か吹雪あり、後晴れ。東京では桜開花とか。
◎3月24日。朝方から晴れのなかでの吹雪。このところ寒の戻りか。
◎4月13日。グランドでの運動はじまる。桜はすでに万開を過ぎ
て、散り始めている。まだ耳朶が痛いほどの寒さのなか、歩く。
◎4月16日。ウグイス初聴(昨年と同日)。
◎4月18日。風強し。窓外は桜吹雪。
            2015年4月25日 記  北の獄より
2015-08-16(Sun)

〔第80信〕 〔寸哲録〕〔66〕~〔70〕

〔寸哲録66〕ダンディズムとは、たとえ時代遅れとか、先走
り過ぎているとか、保守的だとか、過激だとか、などと非
難されようとも、モード流行に追従することなく、自己固有
の独自美学に固執し、それに殉ずる覚悟の生き方である。
その意味で、ダンディストとは、女性差別主義者ではないが、涼
しげで反骨な〈男〉原理主義者である。

〔寸哲録67〕江戸期武士道とは、武士でなくなった武士
モドキに武士らしさを保持させつつ行政官吏として操っ
て行く上での、観念的な箍としての寄せ集めの諸規範であ
る。君命捨命による切腹死を戦場死と等価とみなそうと
する儒教道徳で染め上げられた死の観念美学を帯びるそれを、
どう評価すべきかは考え処。

〔寸哲録68〕戦争は血を流す政治。政治は血を流さない戦争。
スポーツはその発祥からして血を流さない戦闘。オリンピック
大会は、その発祥からして諸国家間の血を流さない戦争であり、
スポーツを以てする平和の祭典ではあっても、諸国家間のパワー
ポリティクスの一つの凝縮された局面であることは、否定し得
ない。それ故に、これを以て排外ナショナリズムを掻き立てる
手段、国威発揚の手段とすることも可能なのである。

〔寸哲録69〕真に冒険者と言える男は、目的において少年の
ようなロマンチストであり、その目的を実現する手段・戦略
において、老成した計算づくのリアリストである。

〔寸哲録70〕共同体を喪失した個として自立化すればする
程、観念世界の心情において共同体への復帰を強く希求
するというこの逆説を、ロマン派弁証法と定義するならば、
近代社会における言論空間での戦略的思想戦は、このロ
マン派弁証法を底軸として繰り広げられている。

 2014年8月10日 記 北の獄より
2015-07-12(Sun)

〔第79信〕 〔寸哲録〕〔61〕~〔65〕

〔寸哲録61〕哲学の社会的役目に関する第二定義ーー経験科
学の知見や経験則を取り込みながら、経験科学が語り得ぬ
ことを、直感と理論的推論によって語り、実践的世界観を世に
提起すること。

〔寸哲録62〕哲学の社会的役目に関する第三定義ーー地
球人類全体が進むべき基本的方向性と、その進み方の方法論
を世に提起すること。

〔寸哲録63〕英雄の西洋的定義ーー英雄とは、その器量と
武運によって大量の死体の上に大帝国を築き上げだ勝者である。
英雄の東洋的定義ーー英雄とは、己が身を殺して仁を成
した仁者である。

〔寸哲録64〕英雄の人類発生期における文化論的定義ーー
英雄とは、純動物から人類を文化的動物としてスピンオフせ
しめる文化的な利器・自然の利用法を発見した知者で
ある。

〔寸哲録65〕英雄の哲学的定義ーー英雄とは、即身脱自的
な実存未踏野において、パラダイム転換的な広角縦深視野を
切り拓く思考原器を求め、ついにそれを探し当てた知的
冒険者である。

 2014年8月9日 記 北の獄より
2015-05-19(Tue)

〔第78信〕〔寸哲録〕〔56〕~〔60〕

〔寸哲録56〕西洋思弁哲学における神とは、〈脱動物への意
志〉の、究極目標とするところの絶対純粋思考体が、超越的
スクリーンに投射投映された抽象的実体である。

〔寸哲録57〕キリスト教僧侶の形式的禁欲主義は、純動物と
の距離の遠さ、神(究極の脱動物)との距離の近さを演出
するための衝立障子である。

〔寸哲録58〕俗人信者向けのキリスト教の性道徳は、神の命令
としての、「産めよ殖やせよ」の生殖行為と、脱動物志向からくる
性享楽禁止との妥協の産物である。

〔寸哲録59〕西洋社会の史的法則である〈啓蒙弁証法〉の推
進力、それは〈脱動物への意志〉である。無知蒙昧で欲望の
ままで生きる純動物状態からの脱出の果てに造り出された
近代市民社会は、人類に一方で人権思想という優しさを、他方
では大量虐殺と核戦争という残忍さを与えた。かくして啓蒙
こそが、地上で最も残酷な動物を創り出したという皮肉逆説。

〔寸哲録60〕エベレストの山頂に近づけば酸欠状態にな
るのと同じく、神(絶対純粋思考体)に近づけば近づく程、
思弁哲学は酸欠貧血状態になり、その反動として、自ら否定し
続けて来た動物性への憧れ自己回帰が生じて来る。例えば、
ニーチェにおける自然・大地・肉体・生・金髪野獣・貴族暴力
への憧れが、それである。すなわち、動物性への回帰弁証
法。

 2014年8月8日 記  北の獄より
2015-04-03(Fri)

〔第77信〕〔寸哲録〕〔51〕~〔55〕

〔寸哲録51〕ソクラテス・プラトンに始まり、ハイデガーに至るまで
の西洋思弁哲学は、ニーチェ風の表現を使えば、〈脱動物への
意志〉である。人間はこの文化的動物の、動物性への嫌悪感情
に発し、この動物性を全的に抹殺して、動物性に影響されず、
動物性から全的に解放された純粋思考体を目指すことーーこれ
である。

〔寸哲録52〕西欧思弁哲学は、観念と現実との関係の転倒を完
成させたプラトンにおいて、既に完成に至っている。以降の哲
学は、このプラトン哲学の解釈であり、注釈であり、脚注で
あり、付け足しであり、おまけであり、焼き直しであり、編曲であり、
変奏であるに過ぎない。

〔寸哲録53〕西洋思弁哲学の〈脱動物への意志〉の目標座
には、その時々のさまざまな観念が鎮座ましました。プラ
トンのイデア、中世キリスト教の神、ヘーゲルの絶対精神、ニー
チェの超人、ハイデガーの存在ーーなどなど。

〔寸哲録54〕西洋思弁哲学における、動物的なるものへの嫌
悪感は、奴隷労働によって経済的に成立していた市民社会の、
労働から解放された閑人たちのなかから、哲学者が出現した
というその感性を、継承するものである。それは純動物との
距離の遠さこそが、人間における高貴性であるという、西洋
的価値観を支える感性でもある。

〔寸哲録55〕プラトンの哲学はホモ哲学である。プラトンが同性
愛を高貴なる愛として好むのは、同性愛が最も動物的なる生殖
繁殖から絶対的に切り離された、不毛にして非生産的な性行
為だからである。純動物には、あり得ない性行為だからで
ある。プラトニック・ラブとは、この意味での動物性の排除で
ある。

  2014年7月26日 記  北の獄より
2015-02-27(Fri)

〔第76信〕〔寸哲録〕〔46〕~〔50〕

〔寸哲録46〕威嚇顔と誘い顔が、顔相の二大潮流を成す。原
初的には、男の顔は威嚇顔であり、子供と女の顔は誘い顔で
ある。男は家族を守るために、威嚇顔で外敵を退散させ、子供・
女は誘い顔で、男の保護を引き寄せる。

〔寸哲録47〕美顔とは、時代ごとに進化して来た誘い顔であ
る。美男子とは、威嚇顔を捨て、誘い顔化した男である。美女子
とは、幼顔成熟した女である。

〔寸哲録48〕顔は歳と共に変化する。骨格が固まって以降は、皮
肉が変化して、トポロジー変換的にシフトして行く、幼少時の
面影を残しつつ、人生の足跡を積分して行くかの如く。これは内
面的なものの表出であると同時に、環境や近傍の人々との相
互作用の結果でもある。長い連れ合い同士は、顔も似て来る。

〔寸哲録49〕子供の顔は、色気のない誘い顔であり、若い女の
顔は、色気のある誘い顔である。男もコワモテである必要のな
い社会になれば、誘い顔化して来る。「イケメン」がもてはや
される由縁である。

〔寸哲録50〕教壇の上から知識を与えるという近代教育の
スタイルは、中世キリスト教会の、説教壇から神の言葉を与える
というスタイルを、踏襲・継承したものである。教会人が垂れ
る教説の真理性を担保するのは、無謬なる神の言葉という
ブランドであり、近代の大学人が垂れる学説の真理性を担保
するのは、科学的証明済みというブランドである。

    2014年7月25日 記 北の獄より
2015-01-18(Sun)

〔第75信〕〔寸哲録〕〔41〕~〔45〕

〔寸哲録41〕文化的動物のブライド的自意識を保有しつつ、その
性行為において文化という規範を侵犯し、敢えて、純動物レベ
ルに自ら堕とすことで、自らのプライド的自意識に自虐的に傷を
つけること、その傷口から流れ出す陰美な血の匂いが、エロチシ
ズムの存在論的な香りである。

〔寸哲録42〕女が男を魅する刺激発出域は、下半身から上半身
(股尻→胸→顔)へと重心移動して来た。人間この文
化的動物は、顔以外の身体を布等で覆い隠すことで、顔に
刺激発生域を囲い込み、そのことで、性衝動にロマンチズムとい
う精神的要素の布を纏わせることになる。

〔寸哲録43〕刺激発生域が顔に囲い込まれることで、口唇が性器
のメタファーとなり、食欲が性欲のメタファーとなる。口唇が性衝動の
動物的器官を表現すれば、目は性衝動の精神的器官を表現する。
隠された方の肉体は、再暴露たる不在の想像的現実化としての、
エロチシズムの意識を準備する。

〔寸哲録44〕人間この文化的動物に至り、固体認知の感覚器官
は、臭覚器官から視覚器官へと重心移動し、識別域は顔に集
中して行く。個体が他の個体と違ったものとして識別認知され
るのは、その顔によってである。人とは顔であり、人は顔として
存在し、顔として生きて行く存在である。

〔寸哲録45〕人は顔で識別し合い、顔がその人間の自己同
一証明であり、刺激発生域(性的アピール・ゾーン)が顔に囲
い込まれている故に、人は顔に恋をし、顔で恋するのである。
とりわけ一目惚れは、である。肉体でする恋は、そこから
もう一歩踏み込んだ段階である。

  2014年7月21日 記  北の獄より
2014-12-18(Thu)

〔第74信〕真正保守は原発即時ゼロ〔17〕~〔32〕

 〔17〕人災=人為ミスは、いずれゼロに出来ると主張する学者や評
論家は、一度も生産過程に身を置いて装置操作を行ったことの
ない連中です。原発稼働中も、毎日のごとく小さな人為ミスは起
こっていました。そういった小さな人為ミスが、積もり積もって
大きな人為ミスへとつながって行くのです。
 〔18〕たった一つのミスなら想定・対処は比較的可能です。
しかし、複数のミスが同時的に連続して起こるとなると、どん
な事態が結果するのか、予想し難く、想定外となってしまいま
す。そして、この想定外の事態が、時として、偶然の競合によって
起きてしまうのです。例えば、チェルノブイリ原発事故のように。
 〔19〕人は予期せぬミスを自ら犯し、その結果が取り返しの付
かないレベルだと、動転し、頭のなかは真白、日頃の訓練マ
ニュアルもふっ飛んでしまい、Aボタンを押すべきところ、Bボタ
ンを押してしまい、増々事態を悪化させてしまうよう
な行動を、取ってしまうものなのです。これが人間の本性です。
非常事態における人間の傾向的心理です。平常心=不動心など
というものは、そう誰でも持ち得るものではありません。
 〔20〕「事故は起こり得る最悪のパターンで起こる確率をもって
いる」--これが最悪事故の法則です。一つのミスが別
のミスを呼び寄せるという形で、同時連鎖的な複合ミスを引き
寄せ、最悪の事態に至るという可能性を、人間が操作する
機械や装置や大小のプラントは、必然的に孕んでいるのです。
 〔21〕原発の場合、プラント内部の人為ミスだけでも崩壊事
故に至ります。人為ミスなしでも、プラント外部からの自然災害的外
力や、人為外力によっても崩壊事故に至ります。福島原発の崩壊
は、天災的外力と内部的人為ミスという人災との複合によって、
引き起こされたといえるのでしょう。
 〔22〕事故になっても死者が出ていないから原発は安全だ、と推進
派は主張します。化学合成プラントともよく事故を起こし、死者を出して
います。しかし、化学プラントの爆発事故などは、空間的にも時間的
にも、経済損害的にも社会影響的にも、極めて限定されたもの
であって、原発事故の比ではありません。
 〔23〕化学プラント爆発事故で被害を受けるのは、せいぜい百m以
内の小地域です。原発事故の被害範囲は、数県に跨る一地方、さらに日
本の半分ということもあり得ます。住民の避難移動は、数十
万から数百万人、さらに数千万人ということもあり得ます。経
済活動の損失は、何十兆円、何百兆円単位です。時間的に
も、何十年と響きます。国土は広範囲で荒廃し、国民経済は
致命的打撃を受けるのです。
 〔24〕では、なぜ原発事故は、一国の経済活動を長期に渡って
停滞させてしまうのでしょうか。それは、放射能という毒を広範
囲にばら撒いてしまうからです。この毒は、子々孫々に至る
まで、百年二百年に渡って、健康被害の影響を及ぼします。原発は、
一旦、崩壊事故を起こせば、核爆弾と同様の効果をもってし
まうのです。
 〔25〕原子力の平和利用とは、原発の本質を隠すための、カム
フラージュ的な美名でしかありません。原発とは、核分裂反応
を人為的に遅延・超スロー化した核爆弾そのものです。超スロー
化の仕組が壊れれば、核爆弾と化してしまうのです。その上、
原発というものは、技術的に未完成の、実証テストを受けてい
ない、巨大欠陥プラントなのです。
 〔26〕プルトニウムを産出する原発を持てば、核抑止力になると
の推進派の主張も、全くの無根拠主張です。核抑止均衡論
とは、「核攻撃を行えば即座の倍返し的カウンター・パンチで
自らも滅亡してしまうから核攻撃は控えるはず」とい心理
推測論です。核物質を持っているだけでは、即座の倍返し的
カウンター・パンチを決行し得ないが故に、抑止力にはなりま
せん。
 〔27〕逆に、原発を国内に多数保持する国家は、国防的な脆
弱性バルネラビィリティーを高めてしまうことになります。なぜな
ら、敵国は核兵器を使用せずとも、非核・通常兵器で原発
を攻撃破壊することで、核爆弾を投下したと同様の被害を、
その国に与えることが出来るからです。
 〔28〕原発か火発(石油)かという二者択一も推進派のゴマ化
し論法です。原発(輸入ウラン)、火発(輸入石油・ガス)という選択
肢以外にも、水力(従来の再生エネ)、自然再生エネ(太陽
光・風力・地熱・潮力・波力・ゴミ燃焼・水素燃焼)、さら
にフリー・エネルギーといった選択肢があります。原発ゼロでも自
然再生エネをベース電源にして、火発への依存度を徐々に減
らして行く戦略は成り立ちます。
 〔29〕つまり、火発は二酸化炭素を大量に放出するから原発の方
がいいという主張は、自然再生エネ電源の潜在的発展力を
無視している、意図的に無視したものである故に、そもそ
も成り立ちません。火発がダメなら、自然再生エネで行けばいい
のです。60年前に原発を導入せず、火発の次は自然再生エネと
の国策で、長期戦略的に研究投資を行っていれば、原発
なしで、現在の電力需要は、十二分に賄える段階に至って
いたのであろうし、自然再生エネの最先進国になっていたでし
ょう。当時の戦略判断に重大な誤りがあったのです。
 〔30〕米国の口車に乗って、原発導入という間違ったエネ戦
略を取ったために、自然再生エネの研究開発・実用化に半世
紀の遅れを取った上、さらに原発廃炉への何兆円とい
う非生産的税金投入を余儀なくされ、国民経済
的な重荷を抱え込んでしまったのです。その上に、福島原発に
よる放射能汚染苦です。
 〔31〕自前の資源を持っていなかったから対英米戦争を行
わざるを得なかった、との推進派の主張も、無根拠主張です。
中国大陸から侵略軍隊を撤退させていたら、石油禁輸には
ならず、対英米戦争は避け得ていたのです。原発は自前資源の
如く、推進派は主張しますが、原発の原料たる
ウランは自前資源ではありません。自然再生エネこそが、本源
的にして無限の、百%自前資源です。石油・ガスだけでなく、もいずれは
枯渇してしまうのです。
 〔32〕原発ゼロか原発再開かは、真の保守か否かを
分かつ試金石です。推進派は、目先の金目しか頭にな
い偽似保守です。原発は、敷島の豊葦原の瑞穂の国を
滅ぼし、日本人の民族的生理体質の遺伝子的劣化のリス
クを高める故に、原発即時ゼロを主張し実行する保守こそ、
真の憂国の士であり、真正保守です。

  2014年7月20日 記 北の獄より
2014-12-03(Wed)

〔第73信〕真正保守は原発即時ゼロ〔1〕~〔16〕

 〔1〕前略。今回は原発問題について考えてみます。「原発はトイレの ないマンション」という原発批判に対して、核廃棄物の地下放置(いわゆる地層処分)は技 術的に完成している、と推進派は反論します。しかし、この推進派の主 張は無根拠であり、非科学的です。先ず近代科学の真理原則から しても、真理条件を欠いた主張です。なぜなら、十万年後まで事故な く安全に保管できたという実証データは、存在しないからです。
 〔2〕現在から遡って10万年前に地下放置が始まり、現在に到る まで事故なく安全に保管できた場合のみ、10万年的安全性が技術 的に実証できた、と主張できる訳です。しかし、このような実証実験 は存在せず、そもそも人類にとってこのような実証実験は、絶対 的に不可能です。それゆえに、核廃棄物の地下放置は安全であ り、技術的に完成しているとの主張は、非科学的な誤謬であ り、科学的真理として主張することは出来ないのです。
 〔3〕科学的真理でもない事柄を、あたかも科学的真理であるか の如く主張し、喧伝するという地下放置をめぐる言説の構造 は、原発そのものが技術的に絶対安全であると主張・喧伝して来 た言説の構造とそっくり同じです。推進派は、福島原発の崩壊 事故後も、何ら反省するところなく、同じ言説の構造を再生産 しているのです。原発の危険性を立証する実証データは多数あり、 原発の安全性を立証する実証データ(事故事例)はゼロにも拘らず、推進派 は原発安全を主張して来たのです。この言説構造は、談合的科学技術 とでも呼べるものです。
 〔4〕談合的科学技術とは、原発技術者・電力産業・経産官僚の 談合、金目を回して、このあたりで手を打とうというような、癒着 と馴れ合いによって、「真理」が決定される科学技術観です。安全 観です。この科学技術観には、実証実験による実証データの裏付け という、近代科学の真理条件が全く欠けています。そもそも、原発の ような危険極まりない巨大プラントに、実体的な超過酷ストレスを加 えて破壊するというような実証実験は、核爆弾を爆発させるの と同じで、恐くて出来ません。つまり、安全性をチェックする実証実験 は、1回も行われていないのです。
 〔5〕安全性をチェックする実証実験が原則的に不可能なことから、 その代替として、科学的粉飾をこらすために採用されているの が、シュミレーションによるバーチャル・テストです。しかし、この仮想検 証に科学的真理性はありません。なぜなら、条件の取り方や変数・ 係数の取り方によって、幾らでも恣意的操作が可能だからです。 バーチャル・テストとは、談合的科学技術の非真理性に目隠し をするための、カムフラージュです。
 〔6〕仮想検証は、実証実験に取って替わることは出来ません。その 結果は、科学的真理性を担保するものではなく、操作者の欲望(意 図)によって、いかなる恣意的結果も出すことが可能な代物なの です。原発技術者・電力産業・経産官僚の三者談合によって、この当 たりで安全OKにしようという結論を出してから数値操作をする、というこ とも可能です。
 〔7〕原理的限界もあります。自然現象と人工物事象の総体を、一つの 関数方程式で表現しようとしても、そこには絶対的な限界という ものがあります。方程式に取り込めるのは、人間の認識力で 想定し得るファクターのみです。実際には存在しながら、人間の認 識力で想定し得ないファクターは、想定外として、存在しないも のとして、方程式に取り込めません。そして、この想定外の実在 ファクターこそが、原発の安全性を大きく左右しているのです。かつ、 この想定外の実在ファクターによって引き起こされる想定外の事態は、人 間の思惑を越えて、必ず発生するのです。
 〔8〕では、仮想実験方程式に何と何を取り込むかは、どうやって決 めるのでしょうか。それは例の三者談合の利害調整によって決定さ れるのです。今も最も力があるのは、財力を握っている電力産業で、 原発技術者の存在は、安全主張に客観的かつ科学的なカムフラージュ を施すための、アリバイ的お飾り程度のものに過ぎません。
 〔9〕原発推進派の一般的な心理構造の特徴は、安全であっ て欲しいという願望が、絶対安全であるという観念に転倒して 行くという転倒心理にあります。原発は危険極まりない巨大 欠陥プラントである、という実証事実から出発するのではなく、この 事実を否認し、安全願望に逃げ込んで、誤謬と真理をスリ替え る、そういう転倒心理です。
 〔10〕福島原発メルトダウン以降も、何ら反省されることなく、推進派 における談合的科学技術と安全主張の観念転倒は、再生産され続 けており、この言説構造の再生産として、核廃棄物地下放置の安 全技術完成なる主張が、なされている訳です。ゆえに、こういった観 念転倒の再生産的な言説構造の解体が、今こそ厳しく求めら れていると言えます。
 〔11〕実証データなしに利権当事者の談合によって、都合よく決め られる談合的科学技術なるものは、実証事実とは違った作為 的ルールを事実と見なして行動しましょう、という振舞いである ことからすれば、又、お約束的科学技術と言い換えることも 出来ます。
 〔12〕よく推進派は、死者が出ていないじゃないか、だから安 全だ、と主張します。事実をみれば、日本でも核関連施設の事故 で被曝死者は出ているし、原発労働者の労働被曝による癌死 も多数発生しています。福島原発の崩壊(核汚染)による避難 を原因とした死者(入院患者50人以上)も出ています。それ以上に何十万人もの住民の生 活が破壊され、住みなれた故郷を追われ、そのための自殺 者も出ています(50人突破)。
 〔13〕談合的お約束的科学技術というものは、実証データ に基づかず、科学という名辞をただ偽装として使っているため、 実証データ・反証データが出てくることを、極度に恐れて、実証研究 を潰そうとするものです。そのいい例が、核汚染による内部被 曝の臨床調査研究に対する政治圧力です。
 〔14〕核汚染の恐ろしさは、直接の被曝死だけではありませ ん。恐ろしいのは、内部被曝による遺伝子破壊という、長期スパン で現れて来る遺伝子的健康被害です。超長期的には、日本人全体の 民族的生理体質の遺伝子的劣化のリスクも否定できません。内部 被曝の追跡臨床調査が、今こそ問われている訳です。
 〔15〕推進派の主張の一つに、原発事故は人災だから防げ るというものがあります。つまり、天災は防げないが、人災は人 為ミスから発生するから、その人為ミスをなくしさえすれば、人災 としての原発事故は防げると言いたい訳です。しかし、この考え方自 体百%間違っており、無根拠主張です。
 〔16〕プラント操作における人為ミス(ヒューマン・エラー)は、どんな に改善改良を加え、訓練を重ねても、ゼロにすることはできま せん。これは、絶対的真理です。この真理は、日々生産過程に身 を置いて労働を行っている者にとっては、自明の真理です。ここ にも、「ゼロにしたい」が「ゼロに出来る」へと観念転倒して ゆく転倒心理が見られます。

   2014年7月13日 記 北の獄より
プロフィール

mugunfasaita

Author:mugunfasaita
牢哲Ω玄龍
《著者紹介》
2013年で在獄38年目。この間、在在論哲学の独自の方法論と独創
的な詩法を確立。2011年9月に〈牢獄の法哲人〉名で、電子ブック
『死刑論議その最終決戦に向けて∞君は死刑ありの裁判員制
度を愛せるか?』を、2012年4月に、電子ブック『獄にさく花うた
う鳥∞詩とアフォリズム・哲学的断章Ⅰ』を出版。

twitterーーhttps://twitter.com/routetsu_genryu

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